2011年02月14日

『社内失業 企業に捨てられた正社員』を読んだ感想

『社内失業 企業に捨てられた正社員』(増田不三雄著)を読み終わりました。

この本に出会うまで、聞いたことの無かったことば、「社内失業」。
この本を読み終わったあとに、実は著者のいう「社内失業」が身近に感じられる現象であることが分かりました。
社内にいるにもかかわらず暇で仕事にありつけない状態になることを著者は「社内失業」と呼びます。
なぜ「社内失業者」が生み出されるのか、著者は様々な角度から考察します。
リーマンショック以降、不況の影響を受けて企業が過剰な人材を抱えこむようになった結果、非正規雇用社員であれば契約を打ちきれば済むものの、正社員だとなかなかそうはいかず、一部の社員に仕事が与えられない状態になったり、教育ノウハウが無いため新入社員を育てることができず、放置してしまったり。また、仕事が属人化される一方で、お互いの業務内容に無関心になったり。それは職場に一人一台のPCが配置されるようになったことも背景として挙げられます。まさに著者のいうように個人の資質の問題ではなく、組織的・構造的な問題として捉えるべき、なのだと思いました。
「仕事があるだけ、まだましでしょ」という批判はもっとものようでいて、しかし問題の核心には迫っていないと著者は説きます。
著者が指摘する問題は「多くの若者が社内失業に陥る結果、スキルをアップできず、経験をつむことができないため、転職したくてもすることができない。その結果、彼らの「未来」が奪われる。また、低賃金からいつまでたっても抜け出せなくなる」ということ。
確かに著者が比較するように、中高年の社内失業者=窓際族と比べると、圧倒的に低い給与のまま、昇給もキャリアアップもできない若者の社内失業の問題は深刻だと感じます。

じゃあ、社内失業問題、どう解決すればいいの?という問題にぶつかります。著者は仕事を割り振る管理職の社員また社内失業者それぞれに対して解決方法を提案しています。そこに書かれている解決案は正論であり、その通りに実行されれば社内失業なんてなくなるのに・・と思うのですが、実際の職場の問題は様々な人間関係や感情が絡まりあっていて、なかなかうまくいかないケースが多いのでは・・ともと思いました。

私が強く感じたこと。
まず、企業は「社内失業者が増えている」という現実をしっかり受け止めるべきということ。本書にあった興味深いデータの1つに退職理由について退職者が挙げる退職理由と、企業が認識している退職理由に大きなギャップがあるというデータがあります。
例えば多くの退職者が「能力開発の機会がない」ことを退職の理由にしているのに大して、同じ理由を退職理由として挙げている企業はぐっと少なくなるのです。つまり、本当の退職理由を知らないまま、企業は人材を失っているのです。だから企業は退職する者の真の理由にもっと耳を傾けるべきだと思う。直属の上司には本音が言いにくい場合も多いだろうから、人事部が退職者の本当の理由を聞く場を設けるなど、できることはあると思う。そこで得られた情報をどう活用するかは企業にかかっているけれど。

そして社内失業者ができることは、やはり、自分の売りとなるスキルを磨いて、転職スキルを高め、転職にチャレンジすることだと思う。仕事が無ければ、早めに勤め先に見切りをつけて、転職活動にチャレンジするのも一つの手なのではないだろうか。
社内失業者の多くはトラウマから、次の職場でも社内失業にあったらどうしようと尻込みしてしまうこともあると本書に書かれています。確かに、次の職場でも仕事があまりない可能性だってある。また、本書にある通り、転職回数が多いことは今の転職市場において統計的にはあまり有利ではないし、採用側にはネガティブに捉えられがちです。でも、長期的に一定量の仕事が見込めなそうなのであれば、さっさと見切りをつけてしまった方がいいと思う。能力開発の機会が長期的に奪われて、いればいるほど転職できるスキルが低くなるのであれば、経験やスキルを行かせる場を早く獲得できるように努力をするべきでは。
転職できる自信がまだ無ければ、何か強みをつくる努力を始める。就業中に本業に専念しないのは就業規則違反になりますが、そもそも「本業」がないのであれば、会社が自分を守ってくれないのであれば、なんとか生き抜いていくために、したたかに資格の勉強やスキルアップに励んでもよいのではないかと思う。

こういう風につらつらと自分の意見を書いて、なんだか自分が理想論者のようにも思えてしまうのですが、それだけこの本の内容には色々と考えさせられることが多かったということです。

そして、なんと著者自身も社内失業者とのこと。心が痛みます。。
当事者の視点から、本書を通して多くの問題提起を投げかけてくれた著者に感謝です。


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posted by youxi at 20:21| 面白かった本&映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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