2011年06月23日

「不法移民としての人生」on NYtimes

New York Timesに寄稿された、ピューリッツァー賞を受賞したこともある米国人ジャーナリストのホセ・アントニオ・ヴァルガス(JOSE ANTONIO VARGAS)氏による「不法移民としての人生(My Life as an Undocumented Immigrant)」という記事が注目を集めています。

私もこの記事のことをTwitter経由で知りましたが、実際に記事を読んでみて胸打たれました。今のところ和訳記事はないようなので残念ですが、こうした彼の人生、そして勇気を出して投稿された記事のことを多くの人に知ってもらえればと思います。

彼の寄稿文はこのように始まります。(要所のみ訳しています)

※誤訳などありましたらご指摘下さい......
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約20年前の8月のある日の朝、母は私を起こして、タクシーに押し込んだ。そして私に上着を渡した。「あっちは寒いかもしれないから」と言って。フィリピンの国際空港に到着し、面識のない男に会った。おじだと紹介された。その人は私の手を引いて、一緒に飛行機に乗った。1993年、私は12歳だった。

母は私にもっとよい暮らしをさせたがっていた。だから私を何千マイルも離れる祖父と祖母の元へと送った。サンフランシスコで暮らし始め、6年生に編入し、すぐに新しい家、家族、文化が好きになった。アメリカのスラングに慣れるのには時間がかかったけれど、言葉に対する情熱を見出した。今でもよく覚えているエピソードは友人が"What's up?"と私に聞いてきた時に"The sky."と答えて、周囲の子どもに笑われたことだ。8年生になった時には、自分では正確に発音のできない単語をたくさん記憶して、スペリング競争で優勝した。

16歳になったある日、運転免許を取得したいと思って、事務の担当者にグリーンカードを提出したところ、彼女はそれを裏返して、じっくりと観察し、そして私にそっと囁いた。「これは偽造よ。もうここに来てはだめよ」

混乱し、恐くなった私は急いで家に戻って、祖父に聞いた。「これは偽物なの?」祖父母はアメリカ市民に帰化していた。祖父は悲しい表情を顔に浮かべて、他の偽造書類と一緒にこのカードを購入したのだと私に告げた。「他人には絶対に見せてはいけないよ」と私に警告した。
この時に私は決心した。他の誰にも私がアメリカ人でないことを決して疑われないようにしなければと。そして自分に言い聞かせた。一生懸命働いて、成功を収めれば、市民権を得られるはずだ、と。

私は挑戦した。過去14年間。高校と大学を卒業し、ジャーナリストとしてのキャリアを築いた。表面的には良い生活を築いた。アメリカンドリームを体現した。
しかし、私は今でも不法移民であることに変わりはない。それは異なる種類の現実を生きていることを意味する。つまり、周囲の人々、身近な人にでさえも本当の自分をほとんどさらけ出すことができない現実。家族の写真を棚に飾るのではなく、靴の箱に入れておかなければならない現実。友人達から家族について質問されることがないように。いやいやながら、胸を痛めながらも、道理から外れている、不法だと分かっていることを行わなければならない現実。そして、21世紀版の「地下鉄道」の支援者―私の将来に関心を持ち、私のためにリスクを冒してくれる人々―に頼らなければならない現実を意味している。

現在、米国には1100万人の不法移民がいると言われている。私たちはあなたが想像するような人であるとは限らない。あなたの食べるいちごを摘んでいる人もいれば、あなたの子どもの面倒をみている人もいる。高校や大学にもいる。もしくはあなたが読むニュース記事を書いているかもしれない。私はこの地に育った。ここが私のホームだ。私は自分自身をアメリカ人だとみなしているし、アメリカを自分の国だと思っているが、私の国は私を国民の一人だとは思っていない。
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ヴァルガスさんは記事の後半、高校、大学生活、その後のキャリアのことを書いています。ジャーナリストになるという夢を抱いた彼は、大学在学中にワシントンポストでのインターンシップをするチャンスに恵まれ、大学卒業後もフルタイムでワシントンポストで働く機会を得ます。
彼はそこで記者として意欲的に仕事に取り組み、2008年にバージニア工科大学銃乱射事件を取材した記事ではチームの一員としてピューリッツァー賞を受賞します。

こうした華々しい成功の裏で、彼が階段を一段一段昇ろうとするたびに、不法移民であることがどれだけ障害になっていたかということは記事を読むとひしひしと伝わってきます。それでも努力し続けたのは上記のとおり「一生懸命働いて、成功を収めれば、市民権を得られるはず」と信じていたから。しかし、現実には成功を収めれば収めるほど、不法移民であることがばれてしまうのではないかという恐怖にさいなまれたと記事で打ち明けています。
ピューリッツァー賞を受賞した直後、電話をかけてきた彼の祖母が開口一番に言ったことは受賞を祝う言葉ではなく「誰かに見つかったら、どうするの?」でした。
彼は言葉を返すことができず、「電話を切った後、私は編集室の4階にあるトイレに駆け込んで、座って、ただ泣いた」と綴ります。

その後、キャリアアップのためにワシントンポストを離れて、ニューヨークに移り、ハフィングトンポストで働き始めてからも、意欲的に仕事に取り組み、『ニューヨーカー』にフェイスブック創始者のマーク・ザッカーバーグについての記事を投稿するなど、理想としていた仕事を成し遂げていきます。

しかし、常に不法移民であることの不安が頭をよぎり、成功を収めれば収めるほどに、恐怖感にさいなまれ、落ち込んでいったと言います。ほどなくして彼はハフィングトンポストも去ることを決意。表向きにはドキュメンタリーの宣伝をしたり、オンラインカルチャーについての本を書きたいと言って。しかし、本当の理由は、どんなに職業上の成功を収めても、自分自身の抱える問題が解決されたり、喪失感や疎外感が埋まることがないからだった、と語ります。週末の友人とのメキシコ旅行、自己負担のないスウェーデン旅行にさえも行けない理由をなんとか作りあげなければいけないこと。誰かと親密になって沢山の質問を投げかけられることを恐れて、長期的な交際をすることができないこと。全てにおいて、「誰かに見つかったら、どうするの?」というかつての祖母の台詞が頭をよぎった、と。

今年の初め、彼はワシントン州から2016年まで有効期限のある自動車免許を取得したそうです。これで今後5年間の身分証明書に苦労することはないと安堵すると同時に、それはまた彼にとっては尊敬する人々や自分を信頼してくれる組織に嘘をつく5年間、本当の自分から逃げ続ける5年間が再度始まることを意味することを悟ります。

「逃げるのはやめた。もう疲れ切った。こんな人生はもう送りたくない」
"I’m done running. I’m exhausted. I don’t want that life anymore."

そして、彼は一歩前進し、今まで行ったこと、記憶するかぎり自分の人生を打ち明けることを決めたそうです。過去の上司、雇用主に会って、欺いたことを詫び、今回の記事に書かれている人々からは記事に引用する許可を得たとのこと。友人や家族にも状況を話し、今後の選択肢についての法的な対応を模索しているそうです。

彼は記事の最後に12歳の時に別れてから18年間会っていない母親のことについて触れています。かつては自分をこうした状況に追い込んだ母親に怒りを感じていたこともあったそうですが、つい先頃、あの8月の朝の記憶を補うために、母親に電話したそうです。この記事を書くため、かつては記憶の隅に追いやったあの8月の朝について知るために。

その8月の朝について、母親は彼がスチュワーデスに会えること、飛行機に乗れることにわくわくしていたと言ったそうです。そして、周囲に溶け込めるようにと彼に忠告をしたと。「もし誰かにどうしてアメリカに来たのって聞かれたら、ディズニーランドに行くって答えるのよ」と。


原文はこちらです。
My Life as an Undocumented Immigrant

posted by youxi at 21:49| Comment(4) | 日々感じること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
訳ありがとうございます!
Posted by at 2011年06月24日 12:04

尺八してもらったけどありゃたまんねーな!!
ジュパジュパ凄い音させながら吸いつかれて、30秒で発射しちまった(笑)
しかもオレ、女にお任せして寝てただけなのに5マソも貰った件wwww
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Posted by 吸引力の変わらないただひとつの… at 2011年08月03日 20:42
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Posted by エリザベス女王杯 at 2011年11月02日 12:24
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